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ドキュメンタリー作品をテレビ、映画の枠を超えて広く観客に届ける為に、今、何が可能なのか?
[第4回 座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル]では初めての試みとしてシンポジウムを開催しました。

開催日時:2013年2月10日(日)11時〜12時30分  編集:加瀬澤充  撮影可香谷慧

ドキュメンタリー映画でヒット作品を産み出す秘訣!?

橋本:じゃあたぶんハマってまた映画を作るんでしょうね。
ただ、wowowとかBSの有料放送はおいといて、地上波のテレビって1%の低い視聴率とかとっちゃうと怒られる感じなんですけど、1%でもおそらく30万〜50万人のカウントのはずなんです。会場にテレビの人がいて間違っていたら教えてください。
30万とか50万の中に猫や犬もいるということなんですけど、ところがドキュメンタリー映画と言われてるもので、大ヒットと言われて何人と言えばいいでしょうか? 
大槻さんに聞けばいいでしょうか? 木下さんに聞けばいいでしょうか?

木下:ミニシアターの中では、これはドキュメンタリー云々に限らず、7、8年ぐらい前までは映画館にもよりますが、都内単館で1万人入ればヒットと言えました。
それが今どんどん作品が小粒化してきていて、1万人でもなかなか入らない。動員が6千人、大体800万円興行収入であがればいい。7、8千人入って、1千万円興収があがれば一応ヒット作品と言われるものになります。
都内と全国の考え方ですが、都内で1万人入ると全国だと2万人以上は見込めるかな、という計算になってきます。

IMG_3078.JPG橋本:テレビドキュメンタリーだとどんなに悪くても4、5%いくんですね。まあ、ざっくり計算しちゃうと、200万人規模…を一瞬で。猫もいるんですけど。それって、そういう規模で考えると、実はちょっと違うのかな、という気もしますよね。中村さんがおっしゃるような作り手の気持ちも分かる気もします。
そもそも、東京で1万人がヒットだという規模で、ドキュメンタリー映画を単体でつくっていく上で、一体どういうふうにして作っていくのが良いのか、ヒットするとか当たりたいとか思うわけですが。
それが、どんなことなのかというのは、松江監督、この間、1万人をすぐ超えてしまったということなんですよね。

松江:ぼく初めてなんですよ、「フラッシュバックメモリーズ」という今やってるのがあって。全然違うんですよね、1万人超えるお客さんと、来てる人たちの客層というか。

橋本:今まではあまり1万人を超えなかった?

松江:なかったですね。トーキョードリフターが一番入ってないんですよ、何人ですか?いいですよ、言っちゃって。

木下:えーっと、都内で…

IMG_3144.JPG松江:やめましょ(笑)。だから、全国でもたぶん5千人はいってない? すげー、ちょっとショック。
でも、他の映画も1万超えてないので、実はそんなに変わりはないというか、来てるお客さんの雰囲気だったり、客層の感じというのは、やっぱりドキュメンタリーでそこを超えるというのはすごく大きい。難しいですよね。

橋本:それが1万人を超えると変わってくると?

松江:全然変わりますね。それ以上の数字は、最近だと「エンディングノート」だと思うんですけど、あれはちょっと社会現象というか、ほんとに想定外。
だけど、テレビをやっている人の数字の感覚で言うと、たぶん「エンディングノート」って普通。

橋本:普通というと?

松江:1%いってない?

橋本:1%で30万人。

松江:ドキュメンタリーで1%が社会現象レベルで、1万人で大ヒットというレベルなので。
ただ、中村さんが感じられたように、届き方の強さが映画とテレビって全然違うので。
ぼくもテレビをやって「数字何%だよ」っていうのを聞いても実感が全然ないんですよね。自分がやってた番組とかも。
やっぱり映画って同時に見たときの強さが全然違うものなので。

橋本:「フラッシュバックメモリーズ」は、何で変わったんだと思いますか?

松江:それは今回のテーマかもしれないですけど、越境だったかなと僕は思いますけどね。振り幅が大きかったんですよ、あの映画って。
あれは制作費300万なんですけど、「何でそれなのに3Dなの?」「何で?」がいっぱいあるんですよね。
「インタビュー何で一切ないの?」「何でこれシネコンでやるの?」そういう越境が大きかったから跳ねたかな、という気は…それは、今までの自分の映画の公開の仕方とかを見てて、違うところに行けたからお客さんが…それが今口コミで広がりやすいんですよね。
「こうだと思ったけど違った」というのが口コミにつながったから、広がったかなという気はしますね。

橋本:今、監督から「公開の仕方」というワードが出てきたので、作ったはいいけど、どう公開するのか?ということを考えていらっしゃる方がいると思うので、大澤さん、プロデューサーとしてお作りになって、「どう公開していく」とか「どういうふうにするのか」どのような戦略を立てたり、どう考えていらっしゃるのか、教えていただければ。

IMG_3162.JPG大澤:もちろん公開する前提で基本的には以前から今も作っているんですけど、より具体的に回収する制作費、宣伝費を回収するラインを目安に作ろうとしてます。だから今木下さんがおっしゃっていたように東京で1万人、全国で2万人、そういった数字を意識しながらやってはいるんですけど。話は戻りますが、「隣る人」という作品を去年公開して、あれも東京で約8千人ぐらいで、全国で2万人ぐらいにいきそうだということになってるんですけど。
少しとまどうのは、松江さんが今おっしゃったように、「人数によって質が変わってくる」というところが「隣る人」でも感じられて、メインの客層はどちらかというと年配の女性層であったりとか、児童養護施設とか、そういったところで映画を見る。どちらかというと、ミニシアターによく足を運んでいる…。 
そういった方がメインのお客さんの層で一番多かったんですけど、よく聞かれたのが、ナレーションやテロップが「隣る人」という作品は、ナレーションテロップ字幕がないのでどう見ていいのか分からなかったと言われることが結構あったんです。
「どう見ていいのか分からない」ということをどう捉えていいのか僕も分からなくて。名前が分からない、とか、関係性が見えない、とか、それは「もしかしたら映画の作り方が悪かったのかもな」と思いつつ、丁寧に、伝えやすいようにわかりやすいようにつくったつもりだったんですが、それでもなかなか伝わりづらい。
それは、もしかしたら推測すると、普段見ているテレビであったり、Youtubeとかの短い端的な映像に見慣れていると、もしかしたらどう伝えていいか、伝える人たちの質も少し変わってくるとか、公開する規模、想定する規模と並行して考えなくちゃいけないとちょっと思ってます。

橋本:でも、一方で、規模が広がったりすることで、いろんな問題が出てくるけども、逆に言うとそういうことも含めて新しいお客さん、ドキュメンタリーに今まで来なかったような人が来るとか、そういうことは新しい可能性を生むというふうに私は思うんですけど、そういうことですよね?

大澤:そうですね。ただ、「エンディングノート」のようにおそらく全国で10万人ぐらい入っているんでしょう。どういったところを規模で見込んでいくかというところだと思うんですよ。
ただその中で、お客さんに分かりやすいようにそういうふうに伝えていきやすいようにつくるのか、っていうところと、どこかで驚きを与えるような作品として、そういうふうにヒットしていくというか、受け入れてもらえるようなものを作っていくのか、そこら辺は作品ごとであったり、ぼくだったらプロデューサーという立場なので、関わる監督と作風だったりしたいことと兼ね合いを見ながら、一つ一つ探っていくというのが現状です、今のところ。

橋本:そういう意味で、ずっとドキュメンタリーで劇場をやってらして、客層というか、お客様の変化というのはあるんですかね、ここのところ? ちょっとずつそういう話も出てますけど。

大槻:あると信じたいです。

橋本:増えてるのか、その辺りを含めて。

大槻:増えてると思うんですよね。つい一昨日ぐらいかな、渋谷の劇場を編成してる人たちと話をしてたら、悪い意味ではないが、「フィクションをやるよりドキュメンタリーの方が当たる」というのは…

橋本:そうですか!?

大槻:やっぱり聞くんですよね、そういう声を。
例えば、東中野ってちょっとずれてる所にあるので、変わったものをやるようにしていたんですけれど、それが渋谷・新宿でも同じような声を聞くんですよ、やっぱり。
僕はとても喜ばしいことだと思っていて、それによってお客さんが多様化して、もっと見るようになって、理想的なことを言えば、そうなっていく。
その代わり、「うち困っちゃうな」ということもあるかもしれないんですけど、そういうのも含めて、変わりつつあるというのは言えますよね。
そういう言葉を渋谷・新宿の劇場から聞くと、やっぱりそうだな、というのは強く思います。

ドキュメンタリー映画の宣伝広告費

IMG_3114.JPG橋本:この映画祭も、今年4回目ですけど、高円寺でやってるのを全然知らなかったという声が多くてちょっと失敗したなって思っているんです。それって、宣伝みたいなことが出てくると思うんですね。
宣伝について言うと、私はずっとテレビをやってたものですから、テレビって、本編のついでに15秒とか30秒の番宣とかって作ればよくて、まあ、PR原稿書いたりもしますし取材も受けますが、昔、初めて映画をやったときに、「宣伝にすごくお金がかかる」って聞いてビックリしてしまって、制作費と同じぐらいとまでは言わないまでも、かなり桁が違うお金がかかるんだ、ということを初めて知って、それはあまり考えてない方もいっぱいいると思うんですね。
私は、いま自分の映画では、宣伝費も回収しなければいけなくて、そのことも含めて計算していく。
宣伝ってすごく大切で、宣伝のお金のかけ方、どうやって売っていくのか、それってどこで配給もされるのかということと全部関わってくると思うんですが、おそらく木下さんはプロデューサーと相談しながらやってらっしゃると思うんですが、その辺りというのは、宣伝配給に関することについてちょっと教えていただければと思うんですけれども。

木下:配給宣伝費のことについて言う前に、先ほどちょっと大槻さんが話をされてた今ミニシアターでドキュメンタリーが求められてるんじゃないかという話についてちょっと補足というか、私が思っていることをお話しますと、単純にここ2、3年確かにドキュメンタリー映画ってミニシアターの中で結構重宝されてる存在だとは思ってます。
でも、それってドキュメンタリー映画を見に来るお客様が増えてるから、というわけではないと思っています。
逆に以前稼ぎ頭だった洋画の単館系がまずお客さんを動員できなくなってきた、ということと、あともう一つ、邦画の、自主制作も含めた小規模制作の作品は現在も作られてますが、中規模の邦画の制作がビデオの販売会社とかのお金がなくなってきたことによって、今あまり作られなくなってきてるんですよね。
ある程度ミニシアターでお客さんの動員を見込めるキャストが出ている作品というのが。その穴埋めとして、ドキュメンタリーというものが…ドキュメンタリーって比較的客層がイメージしやすいものが多いので、重宝され始めているという流れだと思います。
また、配給宣伝費についてなんですが、うちはあくまで配給宣伝会社ですので、大体うちの方で配給と宣伝共にやらさせていただきます。予算については興行の規模にもよりますが、大体うちの会社の規模で、大体200万強〜7、800万円ぐらいまで幅があります。大体それぐらいの規模で配給宣伝費を含んでうちの方で配給宣伝をさせていただいています。
そのお金については、制作者から出していただく場合、うちが完全に受託という形で受けさせていただく場合もありますし、もしくは自社で配給宣伝費を負担してそれで一緒にやっていきましょうという形でやっていく場合もありますし、完全にケースバイケースです。
IMG_3178.JPG何をお話すればよかったんでしたっけ?(笑)具体的な話をちょっとします。
流れとしてうちがどういう形でやっているのかということをご説明しますと、東海テレビ放送の「平成ジレンマ」「青空どろぼう」「死刑弁護人」「長良川ド根性」「約束」という5本、この作品に関しては、うちが主導して配給宣伝しているわけでは決してないです。
東海テレビ放送のプロデューサーの阿武野さんが、ちょっと話が長くなるんですが話しますが、一番最初は岩波書店から出た「日本のドキュメンタリー」という佐藤忠男さん編著の書籍があって、それの書評を産経新聞から阿武野さんが頼まれたんですよ。その書評を書くために「日本のドキュメンタリー」という書籍を読んだら、そしたら映画のドキュメンタリーのことしか書いてなくて、テレビドキュメンタリーのことが書いてない。
それに大変憤慨して阿武野さんが激昂して産経新聞に「何でテレビのことが書いてないんだ!」ということを原稿に書かれたんですよ。
それを読んだ岩波書店の担当の編集がおもしろがって「日本のドキュメンタリー」の第2巻目、第3巻目に阿武野さんに原稿を頼んだ。
阿武野さんとしては、「日本のドキュメンタリー」の原稿を書いていく中で、「テレビと映画の境目って何だろう?」って考える。
じゃあそこを越えていけばいいんじゃないか、いわゆる越境ですよね。
というところで、どうやってテレビでつくったドキュメンタリーを劇場で公開していけばいいんだろう?というところで、うちに回り回って相談がきた。あくまで、東海テレビ放送さんの作品についてうちとしては受託という形でやってます。
なんで、表記としては「配給協力」という名義になってます。東海テレビ放送さんから、映画の配給宣伝費をいただいて、うちの方で配給宣伝をさせていただいている。
じゃあなぜうちが東海テレビ放送さんのドキュメンタリーを劇場公開するのか、ということについては、理由って何でしょう…?配給宣伝費をいただくことが出来るので、うちの会社としてのリスクが少ないということももちろんあります。
それもありますが、東海テレビのドキュメンタリーって東海三県しか放送されず元々こっちでほとんど見れないんです。「平成ジレンマ」を、初めて見たときに、「東京のお客さんたちと一緒に映画館で共有したい」と思ったんです。
その想いから、一緒にやっていきましょうということで、大槻さんに相談していったという流れですね。

橋本:大槻さんはどうされたんでしたっけ?

IMG_3149.JPG大槻:見て、「平成ジレンマ」は一緒ですよ。「1本じゃないよね?」ということは聞きました。
続けてということが戦略的に…その時点で3本あるということで、じゃあやりましょう。

橋本:「死刑弁護人」がその中では一番ヒットしている?

大槻:そうですね。「死刑弁護人」が一番当たってますね。あれはちゃんとブランディングできたな。
それは阿武野さんや木下さんの戦略でしょうけれど、ちゃんと一つのブランドとして確立したな、ということはあります。

橋本:世の中に出していくには、「はい、これ見てください」ということではなかなかいかなくて、ブランディングという話が出ましたが、かなり売り方によって、タイトル一つをとってもそうだと思うんですけど、変わってくる。
テレビでもどうやったら数字をとれるかという似たようなことをやってる…でも、ちょっと違うかな、という気はしますよね。

大槻:そうですね。

橋本:やっぱりとにかく電車に乗ってお金を払って来てもらうという行為ってえらく大変なんだな、って思います。

大槻:ほんとにそうですね。見てると、何となく見えますよね。
戸塚宏さんとか、ある種アイコンじゃないですけど、ある種分かりやすいものがあるか。安田弁護士とか。
それは割と結果と比例してる。そうじゃないものをもっとするということが次のやることなのかな。